特許庁委託 平成17年度産業財産権制度各国比較調査研究等事業
各国における周知商標の保護に関する調査研究報告書
平成18年3月
社団法人 日本国際知的財産保護協会
はじめに
特許庁委託の平成 17 年度産業財産権制度各国比較調査研究等事業は、主要国の産業財 産権制度の現状と動向を把握し、わが国の望ましい制度の構築に役立てることを目的とし ている。この「各国における周知商標の保護に関する調査研究」は事業の一環である。
産業構造審議会知的財産政策部会商標小委員会において、周知商標制度の保護の在り方 が議論され、その中で防護標章登録制度の廃止も議論の対象となった。一方、我が国にお ける周知性認定の審査実務において、防護標章登録を受けている商標は、その登録に従い、 周知な商標と推認して取り扱うものとしており、審・判決で周知な商標と認定されたもの とともにリスト化して審査資料に活用している。このことから、防護標章登録制度が廃止 された場合の同リストの取扱い等、検討する必要がある。
また、近くWIPOにおいて、商標制度の実体調和に関する議論が本格的にスタートする ことが予定されており、その場合、1999 年に採択された「WIPO 周知商標の保護規則に 関する共同勧告」は有力な審議項目として再度取り上げられる可能性がある。
そこで、今後の審査運用を含めた周知商標保護の在り方を検討するため、各国の法制・ 運用実態を調査し、「WIPO 周知商標の保護規則に関する共同勧告」の各国における採用 状況等について把握することとした。本報告書が、周知商標の保護に向けて基礎的な資料 となれば幸いである。
調査研究にご協力いただいた、各国特許庁、法律事務所の関係各位にこの場を借りて心 からお礼を申し上げたい。
平成18年3月
社団法人 日本国際知的財産保護協会 (AIPPI・JAPAN)
目 次
Ⅰ.概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1. 調査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2. 各国における周知商標保護の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3. 周知商標に関する歴史的な背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅱ.各国における周知商標の保護
1. アメリカ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2. OHIM・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3. イギリス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4. ドイツ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5. オーストラリア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6. 中国・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7. 韓国・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8. 台湾・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9. ロシア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10. ブラジル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
11. インド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
12. トルコ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅲ.日本企業の各国に対する評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1. 出願状況(出願件数、登録件数)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2. 第三者による登録、使用事例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3. 登録拒絶事例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4. 各国に対する評価・要望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅳ.日本企業の日本の周知商標保護への評価・要望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1. 周知商標リストによる審査について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2. 周知商標リストの構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3. 防護標章登録制度について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4. 第三者による出願事例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅴ.各国の商標制度比較表
1. ヨーロッパ・アメリカ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2. アジア・オセアニア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅰ.概要
Ⅰ-1.調査の概要
まず、Ⅰ-3で周知商標保護の歴史的背景について調査した。具体的にはパリ条約、
TRIPS 協定における周知商標保護の規定内容、さらに、周知商標の保護を大幅に強化す
るWIPOの「周知商標の保護規則に関する共同勧告」の内容について調べた。次に、各 国の周知商標保護の実態を調査した。対象としては、欧米から、アメリカ、OHIM、イ ギリス、ドイツ、アジア・オセアニアよりオーストラリア、中国、韓国、台湾、さらに、 今後日本との関係が進展するであろう、ロシア、ブラジル、インド、トルコの計12カ国 とした。
調査項目と内容は、以下の通り。 (1)商標に関する法律
直近の商標法その他の改正状況 (2)商標法における周知商標
商標法の中で周知商標がどのように取り上げられているか、2種類ある場合は、 周知商標と著名商標とし、それぞれの定義を記す
(3)審査の流れ
(4)周知商標に抵触する商標の登録規制
周知商標と抵触する商標が出願された場合、審査のどの段階で登録規制される か、を根拠条文と共に調査
(5)周知商標認定制度と周知商標リスト
周知商標認定制度、周知商標リストの有無とその概要 (6)周知性証明
異議、無効審判等で周知性を証明するために提出する資料 (7)周知商標の保護内容
実際に周知商標と抵触する商標が出願あるいは無断使用された場合の保護内 容、条件等について、その根拠条文と共に整理
(8)WIPO共同勧告の採用状況について
WIPO 共同勧告が採択された後、周知商標保護がどのように取り入れられた かを整理
次に、各国商標制度のユーザーである日本の企業にアンケートを実施し、各国及び日本 の商標制度、運用についての利用状況、評価、要望等の情報を収集した。
最後に、各国の商標制度に関する基礎的な情報を一覧表に示した。
Ⅰ-2.各国における周知商標保護の概要
(1)商標に関する法律
各国の直近の商標法改正・施行は以下の通り。
アメリカ 2002年 韓国 2005年
OHIM 1996年 台湾 2003年
イギリス 1994年 ロシア 2002年 ドイツ 1999年 ブラジル 1997年 オーストラリア 2003年 インド 2003年 中国 2001年 トルコ 1995年
ブラジル、トルコは最近、商標法は改正されてないが、2004年にそれぞれ長官決議、 法令の改正が行われ、周知商標保護が強化された。
(2)商標法における周知商標
調査対象とした12カ国の多くの国では、周知商標、著名商標の2 種類の商標が規定 されており、保護も2段階に分かれている。中国、台湾、ロシア、インドでは1種類し か規定されていない。
(3)審査の流れ
商標権付与前異議制度の国は、アメリカ、OHIM、イギリス、オーストラリア、中国、 韓国、ブラジル、インド、トルコの9カ国であり、商標権付与後異議制度の国はドイツ と台湾の2カ国である。ロシアは異議制度がなく、商標権付与後無効制度である。ブラ ジルは出願を受け付けると直ちに公告され、異議申立を受け付けた後に実体審査が行わ れる点で、他と大きく異なる。
(4)周知商標に抵触する商標の登録規制
(5)周知商標認定制度と周知商標リスト
周知商標認定制度、周知商標リストを持たないのは、アメリカ、OHIM、イギリス、 ドイツ、オーストラリア、韓国、台湾である。中国、ロシア、ブラジル、インド、トル コは何らかの認定制度を持つ。いずれも最近の商標法、商標規則あるいはガイドライン 等の改正により設定されたものである。中国、ブラジル、インドは異議、無効審判等の 個別事案ごとに、認定する制度である。ロシア、トルコは、通常の商標登録制度とは別 に周知商標の認定登録制度を設けたところに特徴がある。ただ、中国とロシア以外は、 制度ができたばかりで運用がまだ定まっておらず、今後の実績が待たれる。周知商標リ ストも中国、ロシア以外は、これから作成予定とのことである。中国では、周知商標リ ストは審査の際、参考にするのみで法的拘束力を持たない。ロシアでは周知商標リスト が法的拘束力を持ち、異議、無効請求を含め審査の際に唯一の周知性判定の証拠となる ところが、他国と大いに異なる点である。
(6)周知性証明
周知性を証明する資料に関しては、オーストラリアを除く全ての国で、商標法、審査 基準、ガイドライン等に示されている。
(7)周知商標の保護内容
周知商標は未登録であっても保護される国が殆どであるが、インドでは周知商標は登 録されていないと保護されない。ロシアでは、通常の商標登録されていなくても保護さ れるが、周知商標として認定され登録される必要がある。
(8)WIPO共同勧告の採用状況について
OHIM、イギリス以外の国では、何らかの形で取り入れられている。例えば、アメリ カ、オーストラリアではFTAに盛り込まれている。
対象国 周知商標 の種類
登録規制 周知商標認定制度 周知商標リスト
アメリカ なし 審査、異議、取消 なし なし
OHIM 周知商標
著名商標
異議、無効 なし なし
イギリス 周知商標 著名商標
異議、無効審判 なし なし
ドイツ 周知商標 著名商標
審査、異議、 取消請求訴訟
なし なし
オースト ラリア
周知商標 著名商標 防護商標
審査、異議、 取消の申請
なし なし
中国 著名商標 審査、異議、 取消審判
あり
個別事案ごとに認 定を申請
あり
法的拘束力なし
韓国 周知商標 著名商標
審査、異議、 無効審判
なし なし
代替品あり 台湾 周知商標 審査、異議、
無効審判
なし なし
ロシア 周知商標 審査、無効請求 あり
周知商標独自の認 定登録制度
あり
法的拘束力あり
ブラジル 周知商標 著名商標
審査、異議、 無効請求
あり
個別事案ごとに認 定を申請
なし
インド 周知商標 異議、取消の申請 あり
個別事案ごとに認 定
なし 作成予定
トルコ 周知商標 著名商標
審査、異議、無効 訴訟
あり
周知商標独自の認 定制度
あり
Ⅰ-3.周知商標に関する歴史的な背景
周知商標の保護に関する歴史的な背景としては、まず、パリ条約に周知商標保護の規定 が設けられ、次にTRIPS協定でその強化が図られた。さらにWIPOの「周知商標の保護 規則に関する共同勧告」が採択され、これは周知商標の保護を大幅に強化する内容となっ ている。それぞれについて、内容を以下に述べる。
(1)パリ条約
1925年ヘーグ改正条約で設けられた、パリ条約第6条の2には周知商標の保護が規 定されている。当局が認定した周知商標は、混同を生じさせやすい同一又は類似の商標 の、同一又は類似の商品について保護される。周知商標の登録は必要とされないが、使 用されていることが条件であり、サービスにまで保護が及ばない点で、周知商標の保護 が不十分である、といえる。
パリ条約 第6条の2 周知商標の保護1
(1) 同盟国は、1の商標が、他の1の商標でこの条約の利益を受ける者の商標としてか つ同一若しくは類似の商品について使用されているものとしてその同盟国において広 く認識されているとその権限のある当局が認めるものの複製である場合又は当該他の 1 の商標と混同を生じさせやすい模倣若しくは翻訳である場合には、その同盟国の法 令が許すときは職権をもつて、又は利害関係人の請求により、当該1の商標の登録を 拒絶し又は無効とし、及びその使用を禁止することを約束する。1 の商標の要部が、 そのような広く認識されている他の1の商標の複製である場合又は当該他の1の商標 と混同を生じさせやすい模倣である場合も、同様とする。
(2) (1)に規定する商標の登録を無効とすることの請求については、登録の日から少な
くとも5年の期間を認めなければならない。同盟国は、そのような商標の使用の禁止 を請求することができる期間を定めることができる。
(3) 悪意で登録を受け又は使用された商標の登録を無効とし又は使用を禁止すること の請求については、期間を定めないものとする。
1 パリ条約の条文については全て、日本特許庁のWebサイトの外国産業財産権制度情報:パリ条約より引用
周知商標と抵触する商標が出願あるいは無断使用された場合の、周知商標の保護の具体 的内容を、以下の表にまとめる。
周 知 商 標 との類似性
商品の 類似性
周知商標 の 登 録
条 件 保護 内容
根 拠 条 文
同一、類似 同一、類似 不要 ・使用されている ・周知性を当局が認定 ・混同
・職権又は利害関係人 の請求
・商品のみ
・拒絶 ・無効 ・使用 禁止
6条の2
(2)TRIPS協定
パリ条約第 6 条の 2 では、周知商標の保護が不十分であったので、補強するために TRIPS協定(1995年発効)では第16条(2)、(3) に周知商標の保護が規定されている。 パリ条約第6条の2の適用範囲をサービスの分野まで拡大し、さらに、周知商標が登録 されていれば、非類似の商品・サービスまで拡大している。
TRIPS協定 第16条 与えられる権利2 -略-
(2) 1967年のパリ条約第6条の2の規定は、サービスについて準用する。加盟国は、
商標が広く認識されているものであるかないかを決定するに当たっては、関連する公 衆の有する当該商標についての知識(商標の普及の結果として獲得された当該加盟国 における知識を含む。) を考慮する。
(3) 1967年のパリ条約第6条の2の規定は、登録された商標に係る商品又はサービス
と類似していない商品又はサービスについて準用する。ただし、当該類似していない 商品又はサービスについての当該登録された商標の使用が、当該類似していない商品 又はサービスと当該登録された商標の権利者との間の関連性を示唆し、かつ、当該権 利者の利益が当該使用により害されるおそれがある場合に限る。
2 TRIPS協定の条文については全て、日本特許庁のWebサイトの外国産業財産権制度情報:TRIPS協定よ
周知商標と抵触する商標が出願あるいは無断使用された場合の、周知商標の保護の具 体的内容を、以下の表にまとめる。
周 知 商 標 との類似性
商品・サービ ス の類 似 性
周知商標 の 登 録
条 件 保護 内容
根 拠 条 文
同一、類似 同一、類似 不要 ・使用されている ・周知性を当局が認定 ・混同
・職権又は利害関係人 の請求
・拒絶 ・無効 ・使用 禁止
16条2項
同一、類似 非類似 必要 ・使用されている ・周知性を当局が認定 ・混同
・職権又は利害関係人 の請求
・登録商標の権利者と の関連性を示唆 ・権利者の利益が害さ
れるおそれ
・拒絶 ・無効 ・使用 禁止
16条3項
(3)WIPO「周知商標の保護規則に関する共同勧告」
1995年WIPOに設けられた周知商標専門家委員会にて周知商標の国際的な保護に関 する議論がスタートし、その後、商標、意匠及び地理的表示の法律に関する常設委員会 (SCT)で検討が継続され、1999 年の一般総会で「周知商標の保護規則に関する共同 勧告」が採択された。以下、WIPO共同勧告と省略。
周知商標の保護規則に関する共同勧告の概要3
条 項 内 容
共同決議 工業所有権の保護に関するパリ同盟総会、WIPO一般総会は、
(1) 各メンバー国に対し、SCT第2回第2部で採択された規定の使用を、 周知商標保護のためのガイドラインとして考慮することができる旨 勧告する。
(2) 各メンバー国に対し、本規定を準用し、周知商標を保護する可能性に つき注意を喚起することを勧告する。
第1条 定義
(1) メンバー国・・・パリ同盟、WIPOのメンバー国。 (2) 官庁・・・商標登録機関。
(3) 権限ある当局・・・周知商標であることの決定等を担当する行政的あ るいは司法・準司法的当局。
(4) 業務上の標識・・・自然人、法人等が業務を特定するために使用する 標識。
(5) ドメインネーム・・・インターネット上のアルファベットの文字列。 第2条
周知商標 の決定
(1) 周知商標決定の要因
① 周知商標の決定に際しては、周知性に言及するいかなる資料をも考 慮しなければならない。特に、関連する公衆における商標の知識・ 認識の程度、商標使用の期間、商標使用の地理的範囲、広告・宣伝 等の期間、広告・宣伝等の地理的範囲、世界的に獲得している登録 の数・期間、権限ある当局で周知と認められた記録等を考慮する。 (2条(1))
② 関連する公衆には消費者、流通経路に携わる者、類似商品(役務) を扱う者を含むが、限定されない。(2条(2)(a))
(2) 周知商標の決定
① 一の関連する公衆に周知であるときは、周知性を認定しなければな らない。(2条(2)(b))
② 一の関連する公衆に知られているときは、周知性があるとみなすこ とができる。(2条(2)(c))
③ 当該国において周知でなくても、あるいは知られていなくても周知 と決定できる。(2条(2)(d))この場合は、当該国以外の一若しくは それ以上の他国において周知であることを要求することができる。 (2条(3)(b))
3 WIPO共同勧告の概要は全て、日本特許庁のWebサイトの国際活動と協力:WIPO・SCT「周知商標の保
護規則に関する共同勧告」について、より引用
(3) 周知商標の決定において要求されない要因
① 当該国において、その商標が使用、登録、出願されていること。(2 条(3)(a)(i))
② 他国でその商標が、周知であること、使用され、登録され、出願さ れていること。(2条(3)(a)(ii))
③ 公衆全体に周知であること。(2条(3)(a)(iii)) 第3条
周知商標の 保護:悪意
(1) 周知商標は、当該国で有効に周知となったときから保護する。(3条 (1))
(2) 競合する利益の評価には悪意を考慮することができる。(3条(2)) 第4条
抵触する 商標
(1) 周知商標と商標との抵触の条件
① 周知商標と混同を生じさせやすい複製、模倣、翻訳、音訳よりなる 商標(若しくはその要部)であって、周知商標が使用する商品(役 務)と同一若しくは類似の商品(役務)に使用され、出願され、登 録されている商標。(4条(1)(a))
② その商標(若しくはその要部)が、周知商標の複製、模倣、翻訳、 音訳よりなる場合であって、(i)周知商標の所有者との関連性が示さ れ、かつ 周知商標の所有者の利益を害するおそれがあるとき、(ii) 希釈するおそれがあるとき、(iii)不正利用しているときには、その商 標が使用され、出願され、登録されている商品(役務)に関係なく周 知商標と抵触する。(4条(1)(b))
③ 希釈又は不正利用の場合は、公衆全体に周知であることを要求する ことができる。(4条(1)(c))
(2) 周知商標の救済規定
① 商標が周知商標と抵触する場合は、周知商標の所有者にはその商標 に関し、異議(混同の場合)、無効(職権による取消を含む)、使 用の禁止を要求する権利が与えられる。(無効の場合は、登録の事 実が公に知らされた日から5年間。使用禁止の場合は、使用を知っ たときから5年間。)(4条(2)(3)(4)(5))
② 但し、その商標が、周知商標が周知になる以前より使用され、登録 され、出願されている場合には、悪意である場合を除き、周知商標 との抵触の適用を求められない。(4条(1)(d))
(3) 抵触する商標が不使用の場合は、無効を請求できる期限を設けること はできない。(4条(6))
第5条 抵触する 業務上の
標識
(1) 周知商標と業務上の標識との抵触の条件
希釈するおそれあるとき、(iii)不正利用しているときには、その業務 上の標識の使用は、周知商標と抵触する。(5条(1)(a))
② 希釈又は不正利用の場合は、公衆全体に周知であることを要求する ことができる。(5条(1)(b))
③ 但し、その業務上の標識が、周知商標が周知になる以前より使用さ れ、登録され、出願されている場合には、悪意である場合を除き、 周知商標との抵触の適用を求められない。(5条(1)(c))
(2) 周知商標の救済規定
① 業務上の標識が周知商標と抵触する場合は、周知商標の所有者には、 その業務上の標識に関し、使用を知ったときから少なくとも5年間 使用の禁止を要求する権利が与えられる。(5条(2))
(3) 悪意の場合は、使用の禁止の要求のための期限を設けることはできな い。(5条(3))
第6条 抵触する ドメイン ネーム
(1) 周知商標とドメインネームとの抵触の条件
ドメインネーム(若しくはその要部)が、周知商標の複製、模倣、翻 訳、音訳よりなる場合であって、悪意で登録又は使用されたときは周 知商標と抵触する。(6条(1))
(2) 周知商標の救済規定商標の
周知商標と抵触する商標が出願あるいは無断使用された場合の、周知商標の保護の具 体的内容を、以下の表にまとめる。
周 知 商 標 との類似性
商品・サービ ス の類 似 性
周知商標 の 登 録
条 件 保護 内容
根 拠 条 文
異議 4条(1)(a) 4条(2) 無効 4条(1)(a)
4条(3)(a)、(b) 4条(5)(a) 混 同 を 生 じ
さ せ や す い 複製、模倣、 翻訳、音訳
同一、類似 不要 混同
使用 禁止
4条(1)(a) 4条(4) 4条(5)(b) 無効 4条(1)(b)(ⅰ)
4条(3)(a)、(b) 4条(5)(a) 複製、模倣、
翻訳、音訳
限定なし 不要 ・所有者との関連性を 示す
・所有者の利益を害す
る 使用
禁止
4条(1)(b)(ⅰ) 4条(4) 4条(5)(a) 無効 4条(1)(b)(ⅱ)
4条(1)(c) 4条(3)(a)、(b) 4条(5)(a) 複製、模倣、
翻訳、音訳
限定なし 不要 ・不正な手段による識 別力の毀損、希釈 ・公衆全体に周知であ
ることを要求するこ
とができる 使用 禁止
4条(1)(b)(ⅱ) 4条(1)(c) 4条(4) 4条(5)(a) 無効 4条(1)(b)(ⅲ)
4条(1)(c) 4条(3)(a)、(b) 4条(5)(a) 複製、模倣、
翻訳、音訳
限定なし 不要 ・識別力の不正利用 ・公衆全体に周知であ
ることを要求するこ とができる
使用 禁止
周知商標と抵触する業務上の標識が無断使用された場合の、周知商標の保護の具体的 内容を、以下の表にまとめる。
周 知 商 標 との類似性
商品・サービ ス の類 似 性
周知商標 の 登 録
条 件 保護 内容
根 拠 条 文
複製、模倣、 翻訳、音訳
限定なし 不要 ・所有者との関連性を 示す
・所有者の利益を害す る
使用 禁止
5条(1)(a)(ⅰ) 5条(2)
複製、模倣、 翻訳、音訳
限定なし 不要 ・不正な手段による識 別力の毀損、希釈 ・公衆全体に周知であ
ることを要求するこ とができる
使用 禁止
5条(1)(a)(ⅱ) 5条(1)(b) 5条(2)
複製、模倣、 翻訳、音訳
限定なし 不要 ・識別力の不正利用 ・公衆全体に周知であ
ることを要求するこ とができる
使用 禁止
5条(1)(a)(ⅲ) 5条(1)(b) 5条(2)
周知商標と抵触するドメインネームが登録あるいは無断使用された場合の、周知商標 の保護の具体的内容を、以下の表にまとめる。
周 知 商 標 との類似性
商品・サービ ス の類 似 性
周知商標 の 登 録
条 件 保護 内容
根 拠 条 文
複製、模倣、 翻訳、音訳
限定なし 不要 悪意で登録又は使用さ れた場合
・取消 ・移転
参考資料
周知商標の保護規則に関する共同勧告4 (仮訳)
前文
商標、意匠及び地理的表示の法律に関する常設委員会(SCT)により採択された条文案を 含む周知商標の保護規則に関する共同勧告は、産業財産権保護のためのパリ同盟総会及び 世界知的所有権機関(WIPO)第34回締約国会議の一般総会(1999年9月20日~29日) において承認された。
周知商標保護規則案はWIPO周知商標専門家委員会の第1回会合(1995年11月13日~ 16日)、第2回会合(1996年10月28日~31日)、第3回会合(1997年10月20日~23 日)により検討された。商標、意匠及び地理的表示の法律に関する常設委員会(SCT)は 第1回会合(1998年7月13日~17日)、第2回第1部(1999年3月15日~17日)、第 2回第2部(1999年6月7日~11日)において検討を継続した。
本勧告は、共通原則の国際調和の進展を加速するための新たな方法を検討することにより、 産業財産権分野における変化に歩調を合わせるためのWIPO方針の最初の実現である。国 際的知的所有権法の前進的発展への新たなアプローチに関する問題は、1998-99年WIPO 計画予算主要計画09において概説された。
「産業財産権法における共通原則及び規則の国際調和の早急な発展及び実現に向けた実務 的責務を考慮し、この主要計画のための将来的戦略は条約に基づくアプローチを補完する 方法の検討を含む。締約国がそれを遂行すべき関心事項として判断する場合、産業財産制 度の管理者及びユーザーの実務的利益をより早く獲得することにより、早急に結果を得、 適用するために、産業財産の原則と規則の調和及び事務調整に向け、よりフレキシブルな アプローチがとられる。」(作業文書A/32/2 WO/BC/18/2 86頁参照)
本文書は、条文及び国際事務局により準備された注釈と共に共同勧告本文を含む。
4 WIPOのWebサイト(http://www.wipo.int/about-ip/en/development_iplaw/pdf/pub833.pdf)より引用(仮
共同勧告
産業財産保護のためのパリ同盟の総会と世界知的所有権機関(WIPO)の一般総会は、
周知商標の保護に関する産業財産権保護のためのパリ条約の規定を考慮し、
各メンバー国は、商標、意匠法及び地理的表示の法律に関する常設委員会(SCT)第2回 第2部で採択された規定の使用を、周知商標保護のためのガイドラインとして考慮するこ とが出来る、と勧告する。
さらに、商標登録の分野において権限を有する国際機関のメンバーでもあるパリ同盟又は WIPOのメンバー各国は、ここに含まれる規定を準用し周知商標を保護する可能性につき 注意を喚起することを勧告される。
第1条 定義
この規定に於いて、
(i) 「メンバー国」とは、産業財産権保護のためのパリ条約(世界知的所有権機関を 設立する条約)の加盟国をいう。
(ii) 「官庁」とは、メンバー国から商標登録を行う権限を与えられた機関をいう。
(iii) 「権限のある当局」とは、商標が周知商標であるかどうかを決定し、又は周知商
標の保護のエンフォースメントを担当するメンバー国の行政的、司法的あるいは 準司法的当局をいう。
(iv) 「業務上の標識」とは、自然人、法人、機関又は団体の業務を特定するために使
用する標識をいう。
第1部 周知商標の決定
第2条
メンバー締約国の領域において 商標が周知商標であるか否かの決定
(1) [考慮される要因]
(a) 権限のある当局が、ある商標が周知商標であるか否かを決定する場合、その商標が周 知商標であるとの推論が可能となるどのような事情をも考慮しなければならない。
(b) 特に、権限のある当局は、その商標が周知であるか否かの推定を可能とさせる要因に 関して、以下の情報を含め(限定するものではない)、同当局に提出された情報を考慮 しなければならない。
1. 関連する公衆における、その商標についての知識又は認識の程度 2. その商標の使用の期間、程度及び地理的範囲
3. その商標が用いられている商品(役務)が博覧会又は展示会において広告、宣伝、 発表された場合等、その商標の振興を図った期間、程度及び地理的範囲
4. その商標の登録(出願)が、その商標の使用又は認識を反映している範囲におい ての期間及び地理的範囲
5. その商標の権利行使の成功した記録、特に権限のある当局により当該商標が周知 であると認められたもの
6. その商標と結びつく価値
(c) 上記の要因は、権限のある当局がその領域において商標が周知商標であるかどうか決 定することを助けるガイドラインであり、決定に至るための前提条件ではない。それ ぞれの事例における決定は、むしろ、その事例の特別な事情に基づく。ある事例に於 いては、全ての要因が関係する。他の事例に於いては、いくつかの要因が関係する。 また、別の事例にはおいて、一つの要素も関連しない場合、上記サブパラグラフ(b)に 挙げられていない追加的要因を基準にすることが出来る。このような追加的要因は、 単独で、又は上記サブパラグラフ(b)に記載されている一又はいくつかの要因と関連さ せることができる。
(2) [関連する公衆]
(a) 関連する公衆は、以下の場合を含むが、限定されるものではない。 (i) その商標を用いた商品(役務)の現実の(潜在的な)消費者
(ii) 当該商標を用いた商品(役務)の流通経路に携わる人
(b) あるメンバー国の領域で、ある商標が少なくとも一の関連する公衆にとって周知であ ると認められたとき、その商標は、そのメンバー国によって周知商標であるとみなさ れなくてはならない。
(c) ある商標があるメンバー国の領域の少なくとも一の関連する公衆において知られてい ると認められる場合には、その商標は、そのメンバー国によって周知商標であるとみ なすことができる。
(d) メンバー国は、たとえ、メンバー国のいずれかの公衆にその商標が周知でなくても、 あるいは、もしメンバー国がサブパラグラフ(c)を適用するときにはそのメンバー国で いずれかの関連する公衆において知られていていなくとも、商標を周知であると決定 することができる。
(3) [要求されない要因]
(a) メンバー国は、商標が周知商標か否かを決定する条件として、以下を要求してはなら ない。
(i) そのメンバー国において、あるいは、そのメンバー国に関して、その商標が使用 され、登録され又は出願がされていたこと
(ii) そのメンバー国の領域以外のいずれかの管轄領域において、あるいは、そのメン
バー国に関して、その商標が周知であること、その商標が使用され、登録されて 又は出願が出願されていたこと
(iii) その商標がメンバー国の管轄領域の多くの公衆に周知であること
第2部 保護の範囲
第3条
周知商標の保護;悪意
(1) [周知商標の保護]
メンバー国は、少なくともその商標がメンバー国において有効に周知となった時から 周知商標を商標、業務上の標識及びドメイン名との抵触から保護しなければならない。 (2) [悪意の考慮]
この規定の第2部を適用するにあたり、競合する利益の評価に関する要因の一として 悪意を考慮することができる。
第4条 抵触する商標
(1) [抵触する商標]
(a) 商標又は商標の要部が、周知商標が使用する商品(役務)と同一又は類似する商品(役 務)に使用され、出願され、又は登録されているときであって、その商標又はその商 標の要部が、当該周知商標と混同を生じさせやすい複製、模倣、翻訳若しくは音訳で ある場合には、その商標は、当該周知商標と抵触するものとみなされなければならな い。
(b) その商標が使用され、出願され、又は登録されている商品(役務)に関係なく、その 商標又はその商標の要部が、周知商標の複製、模倣、翻訳若しくは音訳であり、少な くとも以下の一つの条件を満たす場合には、周知商標と抵触するとみなされなければ ならない。
(i) その商標の使用、出願、登録に係る商品(役務)と周知商標の所有者との間に関 連性が示される商標の使用であって、周知商標の所有者の利益を害するおそれが あるとき;
(ii) 不正な手段で周知商標の識別力を弱め又は希釈するおそれがある商標の使用;
(iii) 周知商標の識別力を不正に利用している商標の使用;
(c) 第2条(3)(a)(iii)の規定にもかかわらず、パラグラフ(1)(b)(ii),(ⅲ)の適用にあたって、メ ンバー国は、周知商標が多くの公衆に周知であることを求めることが出来る。
(i) ①周知商標がメンバー国において周知になる以前に、②メンバー国において、③ その商標が、周知商標が使用されている商品(役務)又はそれに類似する商品(役 務)について使用され、登録され、又は、出願されている場合の(商標が周知商 標と抵触するかどうかを決定するための)パラグラフ(1)(a)の適用。
(ii) ①周知商標がメンバー国において周知になる以前に、②メンバー国において、③
その商標が、特定の商品(役務)について使用され、登録され、又は、出願され ている範囲においての(商標が周知商標と抵触するかどうかを決定するための) パラグラフ(1)(b)の適用。
その商標が、悪意で使用され、登録され、出願された場合を除く。
(2) [異議手続]
適用できる法律が第三者に商標の登録に異議申立を認めている場合は、パラグラフ
(1)(a)の下の、周知商標との抵触が異議理由を構成しなければならない。
(3) [無効手続]
(a) 周知商標の所有者は、官庁により登録の事実が公に知らされた日から少なくとも5年 間、官庁の決定により又は関係機関の決定によって周知商標に抵触する商標登録の無 効を要求する権利を、与えられる。
(b) 商標の登録が、関係機関の職権により、取り消されることができる場合には、周知商 標との抵触は、当該登録の無効を理由として、官庁により登録の事実が公に知らされ た日から少なくとも5年間、当該登録の職権による無効理由としなければならない。
(4) [使用の禁止]
周知商標の所有者は、権限のある当局の決定によって周知商標に抵触する商標の使用 の禁止を要求する権利を与えられる。そのような要求は、周知商標の所有者が抵触す る当該商標の使用を知ったときから少なくとも5年間、許容される。
(5) [不使用の場合の無期限]
(a) パラグラフ(3)にかかわらず、メンバー国は、抵触する商標が悪意で登録されている場 合、登録の無効に関して期限を設けることが出来ない。
(b) パラグラフ(4)にかかわらず、メンバー国は、抵触する商標が悪意で使用されている場 合、周知商標と抵触する商標の使用の禁止の請求に関して期限を設けることが出来な い。
て知っていたか、又は、知りうる理由があったかどうかを考慮しなければならない。
(6) [不使用の場合の無期限]
パラグラフ(3)にかかわらず、メンバー国は、抵触する商標が登録されているが使用 されていない場合には、周知商標と抵触する商標の登録の無効を請求出来る期間を定 めてはならない。
第5条
抵触する業務上の標識
(1) [抵触する業務上の標識]
(a) 業務上の標識又は業務上の標識要部が、当該周知商標の複製、模倣、翻訳もしくは音 訳である場合であって、少なくとも以下の一つの条件を満たしている場合は、その業 務上の標識は、当該周知商標と抵触するものとみなされる。
(i) その業務上の標識が使用されている業務と周知商標の所有者との間に関連性が 示される業務上の標識の使用であって、周知商標の所有者の利益を害するおそれ があるとき;
(ii) 不正な手段で周知商標の業務上の標識の識別力を弱め又は希釈化するおそれの
ある業務上の標識の使用;
(iii) 周知商標の識別力を不正に利用している業務上の標識の使用;
(b) 第2条(3)(a)(iii)の規定にもかかわらず、パラグラフ(1)(a)(ii),(ⅲ)の適用にあたって、メ ンバー国は、周知商標が多くの公衆に周知であることを求めることが出来る。
(c) 周知商標がメンバー国の領域に於いて周知になる以前に、その業務上の標識が、メン バー国の領域において、使用され、登録され、出願がなされていたならば、その業務 上の標識が悪意で使用され、登録され又は登録出願がされていた場合を除き、メンバ ー国は、パラグラフ(a)を適用することを要求されない。
(2) [使用の禁止]
周知商標の所有者は、権限のある当局の決定によって、当該周知商標に抵触する業務 上の標識の使用の禁止を要求する権利を与えられる。そのような要求は、周知商標の 所有者が当該抵触する業務上の標識の使用を知ったときから少なくとも5年間、許容 される。
(3) [不使用又は悪意の登録の場合の無期限]
が使用されていない場合、周知商標と抵触する業務上の標識の登録の無効又は商標の 使用の禁止の要求のための期限を定めることはできない。
(b) このパラグラフの目的のために悪意を決定するにあたって、権限のある当局は、周知 商標と抵触する業務上の標識の登録又は使用の時に、その者がその周知商標を知って いたか、又は、知る理由があったかどうかを考慮しなければならない。
第6条
抵触するドメインネーム
(1) [抵触するドメインネーム]
少なくとも、ドメインネーム又はドメインネームの要部が、当該周知商標の複製、模 倣、翻訳若しくは音訳である場合であって、悪意で登録又は使用された場合、周知商 標と抵触するとみなされる。
(2) [取消、移転]
Ⅱ-1.アメリカ
(1)商標に関する法律
アメリカの商標法は、アメリカ全土に適用される連邦商標法と各州の州法とコモンロ ーからなる。本報告書では連邦商標法について述べる。連邦商標法は、ランハム法 (Lanham Act)と呼ばれ、合衆国法典第15巻(15 U.S.C.)の第22章-商標(1051 条から1072条、および1091条から1128条)に規定されている。連邦商標法の第1条 は15 U.S.C. § 1051に相当する。連邦商標法は2002年11月2日に改正された。
(2)商標法における周知商標
アメリカでは、登録されている商標又は先使用されている商標と誤認・混同を生じさせ る商標の出願は拒絶される。周知商標はこの、登録されている商標又は先使用されてい る商標、に含まれることになり、他の国にみられるように、周知商標のみについて特別 に規定した条文はない。
しかし、商標法第43条に著名標章(famous mark)という表現が使われており、著 名標章が他者の使用により稀釈化されることを禁じている。
第43条 (15 U.S.C. §1125) 虚偽の原産地名称、虚偽の記述及び稀釈化1 -略-
(c)(1) 著名標章の所有者は、他人によるその標章又は商号の商業的使用がその標章が
著名になった後に開始され、それがその著名な標章の顕著性を希釈化させることにな る場合は、衡平法の原則に従いまた裁判所が合理的とみなす条件で、その他人による 使用の差止を要求し、また、本項で定めるその他の救済を得る権利を有する。 -略-
1 連邦商標法の条文については全て、日本特許庁のWebサイトの外国産業財産権制度情報:アメリカ合衆国
(3)審査の流れ
出 願 ↓ 審 査
↓ 公 告
↓ 異議申立
↓ 登 録
↓ 取消の請願
・方式審査、実体審査
・登録により損害を被るおそれがあると信じる何人も公告から 30 日 以内に申立可能
・登録により損害を被るおそれがあると信じる何人も登録を取り消す べき旨の請願可能
(4)周知商標に抵触する商標の登録規制
審査、異議、取消、その他の各段階で登録が規制される。実際にどの段階で規制され る件数が多いかは、不明とのことである2。
① 審査
アメリカでは、出願された商標の審査手続において、登録商標および先使用商標と誤 認・混同する商標の出願は、商標法の次の条文に基づき審査官により拒絶されることが ある。つまり周知商標は間接的に保護されている。
第2条 (15 U.S.C. §1052) 主登録簿に登録可能な商標;同時登録
出願人の商品を他人の商品から識別することのできる如何なる商標も、当該性質上、 主登録簿に登録することを拒絶されることはない。ただし、それが次のものからな るときは、この限りでない。
(a) 不道徳な、欺罔的な若しくは中傷的な事項又は生者たると死者たるとを問わず、 人との関連、施設、信仰若しくは国民的なシンボルを軽蔑し若しくは不正に表示し 又はこれらを侮辱し若しくはこれらの信用を毀損する虞のある事項から成り又はこ れを包含するもの。又はぶどう酒若しくは蒸留酒について若しくはそれに関連して 使用される場合に、これらの商品の原産地以外の場所の同一性を示す地理的表示で あって、(ウルグアイ・ラウンド協定法第 2 条(9)にいう)WTO 協定が合衆国に効力 を生じる日に若しくはその日から1年後に出願人によってぶどう酒若しくは蒸留酒 について若しくはそれに関連して最初に使用されるもの
-略-
(d) 特許商標庁に登録されている標章又は他人によって合衆国内で先に使用され て、かつ、放棄されていない標章若しくは商号と、出願人の商品について又はそれ に関連して使用される場合は、混同を生じさせ、誤認を生じさせ若しくは人を欺罔 する虞のある程に類似する標章から成り若しくはこれを包含するもの。ただし、特 許商標庁長官においてこれら同一若しくは類似の標章の使用の態様若しくは使用の 場所又は当該標章の使用される商品に関する条件及び制限の下に当該標章の2人以 上の者による継続使用から混同、誤認若しくは欺罔の生じる虞がないと認定すると きは、かつまた、これらの者が(1)本法律に基づき、係属中の出願若しくは発行され た何れかの登録の出願日のうち最先の出願日前、(2)1881年3月3 日付法律若しく は1905年2月20日付法律の下で先に発行され、かつ、引き続き1947年7月5日 においても完全な効力を保持する2以上の登録の場合においては1947年7月5日 前又は(3)1905年2月20日付法律の下で出願され、かつ、1947年7月5日後に登 録された2以上の出願の場合においては1947年7月5日前にこれらの標章を取引 上合法的に同時使用してきた結果、これらの標章を使用する正当な権利を有するこ ととなったときは、これらの者に同時登録を発行することができる。係属中の出願 又は登録の出願日前の使用は、その出願又は登録の所有者が出願人に対する同時登 録の付与に同意した場合は、要求されない。同時登録は、管轄権を有する裁判所に おいて、2 人以上の者が取引上同一又は類似の標章を使用する正当な権利を有する 旨の確定判決がある場合にも特許商標庁長官において発行することができる。同時 登録を許す際に特許商標庁長官は、当該標章の使用の態様若しくは場所又は当該標 章が登録される商品に同じ条件及び制限を各人に規定しなければならない。 -略-
関連商品又はサービスの出所について消費者に誤認を生じさせるかどうかを考慮す る場合には、問題の標章が同一又は類似の商品に使用されているかどうかのみに限定さ れない。非類似の商品に使用されたとしても、消費者に出所として誤認又は混同を生じ させ得ることが証拠により示されるならば、関連のない商品についても同様にこの法律 は拡大して適用され得る。この決定は、ケースバイケースで行われる。
② 異議
ある標章の登録によって損害をこうむる虞があると信じる国民又は外国人は何人も (法人を含む)、この標章の登録に対し、出願公告から 30 日以内に異議を申し立てる ことができる。
第13条 (15 U.S.C. §1063) 異議申立
よる場合を含む) を被る虞があると信じる何人も、登録が求められるその標章の第 12条(a)に規定する公告後30日以内にその理由を開示し、かつ、所定の手数料を納 付して特許商標庁に異議を申し立てることができる。当該 30 日の期間の満了する 前に書面による請求によって異議申立期間は、更に30日延長するものとし、また、 特許商標庁長官は、当該延長期間の満了する前に正当な理由によって請求があった 場合は、異議申立期間を更に延長することを許すことができる。特許商標庁長官は 異議申立期間の各延長を申立人に通知する。異議は、特許商標庁長官の規定する条 件の下に補正することができる。
③ 取消の請願(petition)
ある標章の登録によって損害をこうむる虞があると信じる(又は現に損害を被ってい る)国民若しくは外国人は何人も(法人を含む)、この標章の登録を取り消すべき旨の 請願をすることができる。一部の申立ては、当該標章の登録日から 5 年以内に行われ なければならない。
第14条 (15 U.S.C. §1064) 取消
本法律又は1881年3月3日付法律若しくは1905年2月20日付法律によって設け られた主登録簿へのある標章の登録により損害 (第 43 条(c)に基づく希釈化による 場合を含む) を被っていると又は損害を被るであろうと信じる何人も、当該標章の 登録を取り消すべき旨の請願を、その理由を開示し、かつ、所定の手数料を納付し て次の期間内にすることができる。
(1) 本法律に規定する標章の登録日から5年以内 -略-
④ その他
周知商標の所有者は、連邦裁判所制度の民事訴訟を提起することにより連邦登録の差 止及び/又は取消しという形で救済を求めることができる。
(5)周知商標認定制度と周知商標リスト
周知商標認定制度、周知商標リストはない。審査の段階で、登録済みおよび未登録先 使用の商標と誤認・混同される商標の出願は拒絶されるが、その際、未登録先使用の周 知商標と誤認・混同させる商標は、新聞、雑誌等の刊行物、インターネット情報、辞書 や百科辞典等を参考にして拒絶される。
(6)周知性証明
① 異議・無効審判で提出する資料
問題に関する裁判所決定の見直しに示されている基準3に依拠している。ある標章が周 知であるかどうかは、審判部が混同の可能性があるかどうかを決定する際に検討する要 素の一つである。これは米国商標審査便覧に反映されているので参考資料に示した。あ る標章が周知であるとの証拠は、調査証拠、関連する消費者からの宣誓供述書、印刷物 に含まれる情報、被告により標章が意図的に複製されたことの証拠、広告に費やされた 費用、売上高、その他ケースバイケースで関連すると思われるものの提出という形で示 され得る。
② ガイドライン
商標法第43条 (15 U.S.C. §1125) の (c) に、標章に顕著性があり著名であるか否 かを判断する要素が記載されている。
第43条 (15 U.S.C. §1125) 虚偽の原産地名称、虚偽の記述及び稀釈化 -略-
(c)(1) 著名標章の所有者は、他人によるその標章又は商号の商業的使用がその標章
が著名になった後に開始され、それがその著名な標章の顕著性を希釈化させること になる場合は、衡平法の原則に従いまた裁判所が合理的とみなす条件で、その他人 による使用の差止を要求し、また、本項で定めるその他の救済を得る権利を有する。 標章に顕著性があり著名であるか否かを判断するのに、裁判所は、次の要素を考慮 することができる。ただし、これには限定されない。
(A) その標章の固有の又は獲得した顕著性
(B) その標章が使用される商品又はサービスに関連した、その標章の使用の期間及 び程度
(C) その標章の広告宣伝の周知の期間及び程度 (D) その標章が使用される商圏の地理的範囲
(E) その標章が使用される商品又はサービスの取引経路
(F) その標章の所有者及び差止が求められた相手の商圏及び取引経路におけるその 標章の認知度
(G) 第三者による同一又は類似の標章の使用状態及び程度、並びに
(H) その標章が1881年3月3日の法律、1905年2月20日の法律、又は主登録簿 への登録の何れによって登録されたか
-略-
(7)周知商標の保護内容 ① 周知の対象
当該の標章が関連する公衆が対象となる。
② 周知商標の保護範囲
周知商標と抵触する商標が出願あるいは無断使用された場合の、周知商標の保護の具 体的内容を、以下の表にまとめる。
周 知 商 標 との類似性
商品・サービ スの 類 似 性
周知商標 の 登 録
条 件 保 護 内 容 根 拠 条 文
限定なし 同一、類似 登録 or 先使 用
誤認・混同を生 じるほど類似
登録の拒絶 2条(d)
限定なし 限定なし 不要 顕著性の稀釈化 異議申立 13条 43条(c) 限定なし 限定なし 不要 顕著性の稀釈化 取消 14条
43条(c) 限定なし 限定なし 不要 顕著性の稀釈化 使用の差止 43条(c)
③ 外国でのみ周知である商標の保護
(8)WIPO共同勧告の採用状況について
アメリカは、オーストラリア、シンガポール、ヨルダン、チリ、バーレーン、モロッ コなどの諸国と自由貿易協定(FTA)を締結し、またNAFTAやCAFTAにより自由貿 易協定を締結している。これらの協定の中で、勧告の内容を規定している。チリとの協 定の関連規定を一例として以下に示す。
合衆国-チリFTA 第17章:知的財産権4 第17.2章:商標(仮訳) -略-
17.2.6. 工業所有権の保護に関するパリ条約第6条の2は(1967年)(「パリ条約」)、 登録の有無にかかわらず、周知商標により知られている商品又はサービスに類似し ない商品又はサービスに準用される。ただし、当該の商品又はサービスに関連して 当該商標が使用されることによって当該の商品又はサービスと商標の所有者との繋 がりが示唆されること、並びに商標の所有者の利益がかかる使用により損なわれる 可能性が高いことを条件とする。
17.2.7. 締約国は、国内法に従って、周知商標と同一又は類似する商標が登録の出願
人により使用されることで周知商標の所有者の商標との混同を生じ、誤認を生じ、 欺き若しくは、当該周知商標と関係があると思わせる虞があり、又は当該周知商標 の名声を不当に利用することを成す場合には、その登録を禁止し又は取り消すため に適切な措置を定める。このように登録を禁止し又は取り消すための措置は、登録 の出願人が周知商標の所有者である場合には適用されない。
17.2.8 商標が周知であるかどうかを判断する際には、締約国は、商標の名声が関連
商品又はサービスを通常取り扱う公衆の部門を越えて普及していることを要求して はならない。
17.2.9締約国は、工業所有権保護のためのパリ同盟総会及びWIPO一般総会により
採択された周知商標の保護規則に関する共同勧告(1999年)の重要性を認識し、こ の勧告に盛り込まれた原則に基づいて行動する。
4
参考資料
米国商標審査便覧(TMEP)
§1207.01 混同を生じさせるほどに類似した登録商標[R-1]5 (仮訳)
商標出願に対する審査においては、通常、法第2条(d)による拒絶は、それが指定商品若 しくは指定役務に関して使用されたときには混同を生じさせるおそれがあるほどに出願人 の商標がいずれかの登録商標に類似しているとの審査官の結論に基づきなされることにな る(欺罔を生じさせるおそれがあるほどに他の商標に類似している商標に関する法第2条 (d)に基づく登録拒絶についてはTMEP §1207.02を、非登録商標に基づく法第2条(d)によ る登録拒絶についてはTMEP §1207.03を参照)。
それが出願において指定されている商品又は役務に関して使用されたときには混同又 は誤認を生じさせるおそれがあるほどに出願人の商標がいずれかの登録商標に似ているか どうかを判断するときには、審査官は、庁の記録をしなければならない。審査官の行う調 査についてはTMEP §1402.01を参照。審査官は、登録手続係属中の出願もまた自らが行 う調査の対象に含めなければならない。TMEP §1208以降を参照。審査官は、庁の記録を 調査しかつ関連するすべての要因を考慮した後に法第2条(d)による拒絶を行うものとす る。その際、審査官は、法第2条(d)による拒絶の基礎となるすべての登録が有効な登録で あることを必ず確認すること。審査官が引用しようとしている商標の登録が庁の自動化さ れた記録においては有効であるものの、(1)所定の期間内に使用を証する宣誓供述書が提出 されなかったことにより法第8条(15 U.S.C. §1058)に基づく取消しの対象になっている か、又は(2)所定の期間内に更新をしなかったより明らかに失効しているか、のいずれかで ある場合における拒絶通知の保留については、TMEP §1108.01(a)を参照。
混同のおそれについての判断に関連する要因はどのようなものであるかを検討する際
には、In re E. I. du Pont de Nemours & Co., 476 F.2d 1357, 177 USPQ 563 (C.C.P.A.
1973) を参照するのが有益であるだろう。関税特許控訴裁判所は、同判決において混同の
おそれ及びそれに関係する判断のプロセスについて以下のように論じている。
「出願人の商標と先使用者の商標がそれぞれの商品に関して同時に使用された場合に は混同が生じるおそれがあると考える場合、長官は、商標法の下、その商標の登録を拒絶 しなければならない。
第2条における『当該性質上』という文言は明らかに第2条(d)の定める『類似』の要素 にも適用される。しかし、混同の問題は、商標の“性質”に係るものではなく、『出願人の 商品に使用されたとき」におけるその“効果”に係るものである。同規定の適用は市場に おいて行われるときにのみ意味のあるものとなる。『使用されたとき』との文言は、頭の中 で考えるところを指すのではなく、当該商標の使用に係る既知の状況のすべてを指すもの のである。
判断のプロセス
消費者間における混同のおそれという究極的な問題は、事実問題であるとされてきた (引用は省略)。もしそれが法律と事実との混合問題又は法律問題であるとされたとしても、 それに関する結論は証拠の中の証明力ある事実から導き出されなければならない。しばし ば指摘されるように、それぞれの事件はそのそれぞれに固有の事実関係に基づき決定され なければならない。すべての事件においてそのまま適用できる指針としての役割を果たし うるリトマス試験紙的なルールは存在しない。
したがって、第2条(d)に基づく混同のおそれに関する判断を下す際には、それが記録中 に存在する場合には以下の要素が考慮されなければならない。
1. それぞれの商標を全体として見たときの外観、称呼、外観及び商業的印象に関する類 非
2. 出願若しくは登録で指定された商品・役務又は先の商標が使用されている商品・役務 の類非
3. 今後も継続して使用されるだろうと思われる確立された取引経路の類比
4. 販売の状況及び買い手(その商品等は『衝動」買いされるものであるか、それとも注 意深くかつ賢明に購入されるものであるか)
5. 先の商標の名声(販売、広告、使用期間) 6. 類似商品に使用される類似商標の数と性質
7. 現実の混同が存在する場合には、その性質及び程度
8. 両者が同時使用された期間の長さと状況(現実に混同が生じていることを示す証拠が 存在しないこと)
9. 商標が使用されている又は使用されていない商品の多様さ(ハウスマーク、ファミリ ーマーク又はプロダクトマークの別)
10. 出願人と先の商標の所有者の市場における関係 (a) 登録又は使用に係る単なる「同意」
(b) 混同を避けるための契約条項(それぞれの者による当該商標の使用の継続に関す る条件)
(c) 商標、出願、登録及び関連事業のグッドウィルの譲渡
(d) 先の商標の所有者のラッチェス(懈怠)又は禁反言であり、混同が生じないこと を示唆するもの
11. 他者が当該商標を当該商品に使用することを妨げる出願人の権利の程度 12. 生じうる混同の程度(些細な混同か、実質的な混同か)
13. 使用の効果を証明するその他の証明された事実
at 566-67.)
審査官が行う混同のおそれの問題に関する検討においては、通常、商標の類比及び商 品・役務の類比が中心的な役割を占めることになる。上に掲げたその他の要素は記録中に 関連する証拠がある場合にのみ考慮することができる。In re National Novice Hockey
League, Inc., 222 USPQ 638, 640 (TTAB 1984) を参照。
連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)が、混同のおそれについての判断及び説明に関して次 のような指針を示している。
「複数の商標間における混同の有無に関する基本的な原則は、商標の比較はその全体に おいてなされなければならず、またそれらの商標が使用される特定の商品・役務との関係 の中で検討されなければならないということである(引用は省略)。したがって、商標を分 解して、商標の一部のみに基づき、混同のおそれがあると結論することはできない(脚注 は省略)。一方、混同の問題に関する最終的な結論が当該商標に対する全体的な検討の結果 として導き出されたものであるならば、かかる結論に至った理由を説明する際において何 らかの合理的な理由から商標中の特定の特徴を多かれ少なかれ特に強調したとしても、そ れは不適切なこととは見なされない(脚注は省略)。実際、そのような形の分析はやむを得 ないものであるとも思われる。」(In re National Data Corp., 753 F.2d 1056, 1058, 224 USPQ 749, 750-51 (Fed. Cir. 1985) )
混同のおそれの問題に関する決定を下すための機械的な基準などは存在しない。決定さ れなければならないのは、現実の商品の間に混同が生じるおそれがあるかどうかではなく、 当該商標がそれに使用されていることを理由として商品の出所に関する混同のおそれがあ るかどうかである(In re Rexel Inc., 223 USPQ 830, 831 (TTAB 1984)及びそこで引用さ れている事例)。それぞれの案件はそのそれぞれに固有の事実関係に基づき決定されなけれ ばならない。上記のコメントは、一般的な指針たることを意図するものであり、この問題 に関する分析についての定則を述べることを意図するものではない。
Ⅱ-2.OHIM(欧州共同体商標意匠庁)
(1)商標に関する法律
各国の商標法に相当するのは、「共同体商標に関する1993年12月20日のEC理事会 規則第40/94号(COUNCIL REGULATION (EC) No 40/941 of 20 December 1993 on the Community trade mark)」である。1996年1月1日施行。以下、規則と省略。
(2)規則(商標法)における周知商標
周知商標と著名商標に相当する2種類の商標について述べられている。独立した条文 ではないが、規則第 8 条(相対的拒絶理由)の中に、それぞれに対応する記載がある。 周知商標、著名商標をそれぞれ以下のように定義することができる。
周知商標:パリ条約第 6 条の 2 において用いられている「広く認識されている(well
known)」の用語の意味で加盟国において広く認識されている商標。
著名商標:共同体において名声(reputation)を得ている共同体商標、または、関係す る加盟国において名声を得ている国内商標
第8条 相対的拒絶理由1
(1) 先の商標の所有者による異議の申立に基づき、次に掲げる場合は、出願に係る商 標は登録されないものとする。
-略-
(2) (1)の目的のため,「先行商標」とは次に掲げるものをいう。
-略-
(c) 当該共同体商標の登録出願の日に、又は適切な場合は、当該共同体商標の登録出願 について主張されている優先日に、パリ条約第6条の2において用いられている「広 く認識されている」の用語の意味で加盟国において広く認識されている商標
-略-
(5) (2)にいう先の商標の所有者の異議申立に基づき、さらに、出願に係る商標は、そ
れが先の商標と同一又は類似であって先の商標が登録されている商品若しくはサービ スと同一又は類似でない商品若しくはサービスについて登録されようとしている場 合、先の共同体商標に関してはその商標が共同体において名声を得ており、また、先 の国内商標に関してはその商標が関係する加盟国において名声を得ている場合、及び、 出願に係る商標を正当な理由なく使用することがその先の商標の識別性若しくは名声 を不正に利用し又は害することになる場合は、登録されないものとする。
1 規則の条文については全て、日本特許庁のWebサイトの外国産業財産権制度情報:欧州共同体商標理事会